以下に掲載する報告書は、東京都教育委員会が「大震災時における学校のあり方検討委員会」より報告を求めたものです。報告を求めた形にはなっていますが、実質東京都教育委員会が策定した今後の方針といっても、そう間違いのないものだと思います。
木村さんのレポート等の生の実体と、ご覧いただいて比較してみると良いかと思います。木村さんの弁によれば、やはり住民が避難するのは自分の学区(校区、校下におなじ)の小学校だそうです。東京都は小中学校は直接の設置義務者ではないので、その意味で東京都教育委員会としてはたぶん、やや歯がゆい書き方になっているかな?とも思いますが、現場の人間としては特段のコメントは避けたいと思います。なお、この文章はOCR読み込みをしてあり、一応チェックはしましたが、もし間違っている場合はお許しいただくとともに、ご指摘下さい。至急直します。また、HTML化するに際し、若干体裁を変更しました。(上記OCR読みとりの課程での誤変換以外の意図的な内容変更は絶対にありません。)
(報告書)
平成7年11月22日
大震災時における学校のあり方検討委員会
先の阪神・淡路大震災においては、多くの学校が避難所として利用された。避難所となった学校では、実際には、教職員が救援物資の管理、水、食糧等の分配、避難者名簿の管理、災害対策本部との連携などに当たり、学校及び教職員が災害応急活動に大きな役割を果たした。
もとより、学校は教育活動の場であり、災害時における学校の役割は、児童・生徒等の安全確保と教育活動の再開に努めることが基本であり、避難所としての機能は応急的なものといえる。しかしながら、今回の教訓によれば、避難所としての機能をも十分念頭に置いた学校の防災設備の整備、避難所運営に従事する教職員の役割の明確化及び教育活動再開への体制整備などを図ることが重要である。
そこで、このような視点から、「大震災時における学校のあり方検討委員会」において、検討してきたところである。
当検討委員会は、本報告書に検討結果をまとめ、今後の都立学校の災害対策及び避難所としての対応についての基本的な方針を示すとともに、都教育委員会、校長及び教職員の役割について提言ずる。なお、区市町村教育委員会においても、この提言に基づき、地域の実情に応じて、自ら設置ずる学校の災害対策を推進するに当たっての指針にすることが望まれる。
この報告書に基づき、都教育委員会として、都立学校における災害対策のための計画を策定し、教育活動再開への支援体制の整備を図るとともに、避難所としての対応及び教職員の服務の根拠を明確にする必要がある。
(1) 児童・生徒等の安全確保ア 安全確保を図るための体制整備
校長は、児童・生徒等の生命及び身体の安全並びに教育活動の確保を図るため、災害予防、応急対策等について事前の備えを十分に行い、万全を期する。そのため、校長は発災時や災害の規模の状況に応じて、適切な緊急避難の指示を行うことができるよう避難計画を立案し、教育計画に位置付ける。
なお、避難計画の中には、全員又は一部の児重・生徒等が帰宅することが困難な場合に備えた体制整備を計画化する。
また、震災時に、教職員が的確に行動できるようにするため、都教育委員会又は区市町村教育委員会(以下「教育委員会」という。)は、学校の防災体制及び災害時における具体的な行動指針などを示した学校防災マニュアルを作成する。その内容として、児重・生徒等の安全確保、教職員の役割分担、情報連絡体制、避難所となった場合の運営、重要文書の取扱い、などが挙げられる。イ 在校中に発災した場合の避難
在佼中に発災した場合、校長は、安全確認ができるまでの間、児童・生徒等を校内に保護し、安全確認ができた場合又は確実に保護者等への引き渡しができる場合には、帰宅させる。保護者に対しては、児童・生徒等の安全な引き渡しを図るため、避難計画に定める連絡体制及び連絡方法を周知徹底する。
また、校長は、保護者等に児童・生徒等を引き渡しできない場合には学校で保護し、教職員は、定められている役割分但に従い、児童・生徒等の安全確保を図る。
なお、校外学習時及び保護者等が避難所である学校に避難して来る場合の児童・生徒等の引き渡し方法並びに校舎等の損壊、火災の延焼等による避難体制も計画化する。ウ 登下校時の避難
校長は、登下校時に発災した場合に備え、保護者と連携し、児童・生徒等の通学路、通学経路の安全性及び一時的に避難できる近隣の公園、公共施設等を把握し、緊急時に適切な行動がとれるような連絡体制及び連絡方法を含む避難計画を策定ずる。この計画を策定した場合には、児童・生徒等及び保護者に周知徹底する。工 夜間、休日に発災した場合の安全確保
夜間、休日に発災した場合の児童・生徒等の安全確保については、保護者の責任において行う。なお、児童・生徒のクラブ活動、寄宿舎内での児童・生徒等の生活など学校管理下にある場合については、校長及び教職員が安全確保を図る。
また、校長は、学校管理下にある場合の連絡体制を整備し、保護者に周知徹底する。オ 帰宅が困難な児童・生徒等への備蓄対策
都立学校では、通学区域が広域に及ぶことから、発災後、交通機関の途絶、建物の倒壊などにより、児重・生徒等の帰宅が困難なため、学校で保護する場合が予想される。そのため、都教育委員会は、学校で児童・生徒等が数日間生活ができるよう、食糧、毛布等を備蓄する。備蓄する場所については、倉庫を確保する。カ 学校施設等の耐震対策
児童・生徒等の安全確保のためまず第一に実現されなければならないことは、校舎等の安全性の向上である。このためには、校舎等の耐震性を確保し、地震に強い学校づくりをすることである。
ついては、教育委員会が学校施設の建築等に当たっては、建築基準法及び同法施行令で規定する耐振展構造設計を遵守ずる。
なお、昭和56年以前の旧耐震基準で建築された学校については、計画的に耐震診断又は耐力度調査を実施する。その結果や地域の実状等を考慮した耐震補強・改築計画を策定し、補強・改築を行う。
また、教育委員会は、発災直後のなるべく早い時期に、専門家による校舎等の安全点検を実施する体制を検討する。
一方、学校内のコンピュータ、テレビ、書棚、化学薬品等の転倒壊や落下等による事故防止を図るため、教育委員会は、学校の施設・設備の点検項目を策定する。校長は、点検を実施する機関として施設・設備点検委員会等を設置し、校内の点検を随時行う。その結果、改善すべき事項がある場合は、速やかに対処する。キ 保健室の整備・充実等
養護教諭は、在校中に発災し、児童・生徒等が負傷した場合は、保健室等を拠点として医療救護活動を実施する。なお、現在の医薬品整備基準は、日常の保健室業務用のみであるため、教育委員会は、今後、初期救急に係る医薬品を整備する。
また、都教育委員会が実施する養護教諭等の研修については、緊急対応能力の向上を図るため、発災時の救護活動に関する内容を積極的に取り上げるなどして、一層の充実に努める。
他方、校長は、発災時における児童・生徒等の安全確保に資するため、日ごろから学校保健委員会活動等を通じて、学校医や地域医療機関等との連携に努める。
教育委員会は、学校において常時薬を服用している児童・生徒等への対応を検討する。
(2) 教育活動の再開への対応
ア 授業再開に向けて
校長は災害状況に即し、教育委員会と連携を密にして、応急教育計画を立案し、これに基づき応急の教育指導を行う。
校長及び教職員は、まず授業再開するための準備行為として、校舎等の安全点検、児童・生徒等の安否確認、通学路又は通学経路の安全確認、教科書・学用品等の滅失状況の把握、児童・生徒等の転出への対応などを行う。校長は、これらの点検結果を、教育委員会に報告する。
授業再開に当たり、教育委員会は、校舎等の復旧、教科書・学用品等の供給及び授業再開の方法等、学校の運営について、指導、助言する体制を整備するとともに、授業再開の決定について校長にその指示を行う。
また、教育委員会は、教育活動再開のために、所管する学校間の教職員の応援体制について整備する。都教育委員会は、都内学校間の教職員の応援体制については、区市町村教育委員会と必要な調整を行う。イ 教職員の参集体制
校長は、発生する災害の程度に応じた教職員の参集体制、連絡体制、役割分担等を定めた計画を策定し、教職員に周知するとともに、教育委員会に報告する。
校長は、この計画に基づき、教職員に対し、児童・生徒等の安全確保、教育活動再開に必要な業務等に従事させる。
なお、計画の策定に当たっては、夜間、休日等の勤務時間外に発生する震度6以上又はこれに準ずる地震に対し、発災当初における校舎等の安全確認、児重・生徒等の安否確認、教育活動再開に必要な業務等に従事するため、教職員は、自宅及び家族の安全を確認した上、自発的に参集する体制とする。ウ 所属校に出勤できない教職員の対応
都立学校長は、教職員が勤務を要する日に交通機関の途絶等により所属校に出勤できない場合の取扱いを定める。定めるに当たっての方針としては、復旧するまでの間、住居近くの都立学校に出勤させ、その学校の校長の指示に従い、児童・生徒等の安全確保などの応急対策活動に従事させるものとする。
また、区市町村教育委員会は、所管する学校の教職員について、地域の実情に応じた取扱いを定めることが期待される。工 心理的ケア対策
都教育委員会は、養護教諭及びその他の教職員に対して、震災時の心理的ケア対策を含むスクールカウンセリング研修の充実を図り、カウンセリングマインドを育成する。現在実施しているスクール・カウンセラー研修において、震災時の心理的ケア対策を視野に入れた内容の充実を図る。
震災後、教育委員会は、当該校長と連携協議し、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の教職員い児童・生徒等への対応として、精神科専門医、スクールカンウセラー等による「心のケア」相談事業を実施する。
こうした相談事業の円滑な実施を図るため、教育委員会は、日ごろから専門医療機関等との連携強化に努める。
(3) 情報収集及び連絡体制の整備
ア 児重・生徒等、保護者との連絡体制
校長は、児童・生徒等及び保護者の状況を適切に把握するための連絡体制を整備するに当たっては、発災時別に策定する。イ 教職員、教育委員会との連絡体制等
校長は、発災時の初動体制を確立するため、教職貝との緊急連絡体制を定め、周知徹底する。
教育委員会は、学校との緊密な連絡を図るため、防災無線が設置されていない場合は、電話回線の使用不能又は回線規制されることを想定し、携帯電話などの災害時にも有効に機能する情報連絡手段・体制の整備に努める。
(1)避難所の指定都教育委員会は、都立学校が避難所に指定される際の基本的な考え方を策定する。その際、避難所として利用できない範囲には、管理スペースである校長室・職員室、機器・化学薬品がある特別教室、医療活動に必要な保健室等が考えられる。
都立学校長は、区市町村長からの避難所の指定要請があった場合には、この基本的な考え方に基づいた自校の施設利用計画を都教育委員会と協議し、決定する。
また、区市町村長に対して、避難所として利用できる範囲を地域住民に十分周知徹底するよう依頼する。
なお、区市町村教育委員会においても、以上の考え方を勘案し、地域の実情に応じた対策を講ずることが期待される。
(2) 学校の防災設備の整備
学校の防災設備の整備に係る役割は、避難所機能としての強化を図る場合は区市町村長、教育施設としての機能向上を図る場合は教育委員会が分担するものと考えられる。
都教育委員会は、都立学校の防災設備について、知事との役割分担を明確にしながら、自家発電装置の設置、下水管の耐震補強、災害時の暖房等に対応できる体育館の電気容量のアップなどの整備に努める。
また、避難所として指定された都立学校においては、学校教育活動に配慮しながら、区市町村長が行う避難所として備蓄する物資の保管場所の提供などに協力する。
なお、区市町村教育委員会においても、小・中学校の防災設備の整備の役割分担について、区市町村長と協議することが望まれる。
(3) 災害時における教職員の役割
ア 学校の避難所業務への協力・援助及び教職員の勤務体制
東京都地域防災計画において、校長は、避難所の開設等災害対策に協力するとともに、学校管理に必要な職員を確保すると規定されている。校長は、学校が避難所となる場合、区市町村長が行う災害応急対策が円滑に実施されるよう協力・援助すべき立場にある。したがって、教職員が、避難所業務に従事することは、当該学校の管理業務の一環を担っているものと考えられる。
しかしながら、避難所の管理運営については、本来的には区市町村の行政職員が従事すべきものであり、教職員の避難所の管理運営業務への従事は緊急避難的対応であると考えられる。このような観点から、都教育委員会は、避難所における教職員の役割分担等についての基本的な方針を示す必要がある。これを基に、区市町村教育委員会は、地域の実情に応じた基本的な方針を策定することが期待される。
この方針によって、校長は、具体的な教職員の役割分担、初動体制等の計画を区市町村長と協議の上、策定する。
また、都教育委員会は、避難所の管理運営業務に従事する教職員に対する勤務条件について、今後検討する。
学校が避難所となった場合、校長は、避難所の管理運営業務について、教職員に必要な指示を行い、教職員は、その業務に従事する。
一方、避難所に指定されていない学校においても、事実上避難して来た人がいる場合、校長は、緊急の必要があると判断し、所属教職員に対して、避難所の管理運営業務に従事することを指示できる。
なお、教職員の参集体制の計画、教職員が交通機関の途絶等により所属校に出勤できない場合の取扱いは、それぞれ前記1(2)イ、ウの考え方の例による。イ 教職員の負担軽減への配慮
教職員の避難所の管理運営業務への従事は、発災初期の緊急対応に限定されるべきのものと考えられる。その後においては、教育委員会は、区市町村長に対し、教職員が学校教育の早期再開に取り組めるよう、避難所の管理運営業務を行政職員に移行するよう要請する。
(4) 避難所が長期化した場合の対策
教育委員会は、避難所が長期化することが予想される場合、校長の報告に基づき、区市町村長に対し避難所の早期解消を申し入れ、速やかに授業を再開できるように努める。教育委員会は、避難所等のため長期間学校が使用できないときは、学校と連携を密にし、代替施設等を確保するなどして授業再開に努める。
(1)防災教育校長及び教職員は、児童・生徒一人一人が、実際に災害が発生した際、的確に状況を把握し、適切な行動ができる能力、態度を培えるようにするため、日常から防災上必要な安全教育を徹底し、児童・生徒等の発達段階に応じた防災教育の充実を図る。そのため、都教育委員会は、児童・生徒用副読本「地震と安全」に阪神・淡路大震災の教訓を生かし、家庭でも活用できるように、内容の一層の充実を図る。学校は、配布された「地震と安全」を効果的に活用するよう工夫し、児童・生徒等の防災意識の啓発に努める。
(2)教職員に対する防災研修
教育委員会は、防災教育・避難訓練に関する指導力及び災害時における防災対応能力、応急処理能力を高めるための防災に関する教職員の研修をより一層充実する。また、校長は、防災を主題とした校内研修を充実する。
なお、教育委員会又は校長は、防災に関する研修において、学校防災マニュアルを効果的に活用するよう工夫する。
(3)防災・避難訓練及び地域住民との連携
ア 実践的な訓練
校長は、実践的な防災能力を高めるために、避難訓練を計画するに当たっては、発災時刻、学校の教育活動等多様な場面を想定した実践的な初期消火・救急活動及び疑似体験できる訓練などを積極的に計画する。
また、区市町村長が実施する防災避難訓練に、教職員及び児童生徒等は積極的に参加・協力するとともに、学校施設の提供についても協力する。イ 地域防災組織との連携
校長は、学校が避難所になった場合に備え、保護者及び地域住民等との連携を強化する。このため、避難所を単位として組織する地域防災会議等の運営に協力し、区市町村、地域防災組織やボランティアとの連携を図る。