7月24日(金) 緊急入院


 何でこんな事になってしまったのだろう。昨日からの熱がいっこうに下がらない。絶対医者に行くんだぞ、という則の言葉で9時を待ってO病院へ電話をする。私の様子を聞いた医師は、「直ぐに病院へ来なさい。どんなことをしても、這ってでも来なさい。」と言った。そこで直ぐに則に電話を入れた。一緒に行くというのにまた大丈夫と言ってしまった。が、実際には一緒に行ってもらわなければどうなっていたか分からない状態だった。

 病院へ着くと直ぐに処置をして、即入院と言うことになった。後は本人は頭がボーっとしてあまり記憶はない。とにかくずっとベッドに横になっていたのには違いない。


則裕の記録

 最初に書いておかなければならないのは、順さんが緊急入院したことだ。だからこの記録は暫定版となっている。

 何とか帰郷した翌日、朝まで高熱が続いたので、7時過ぎにバッファリンを2錠のませた。とたんにひどく汗をかき始めて、体温は改善の方向を示した。9時にA医師に連絡を取るというので、私はとりあえず出勤した。出勤して、たまっている仕事を片づけていると、順さんから電話があった。A医師に電話したところ、「這ってでもいいからO病院へ来るように」言われたという。丁度職場で白血球数が減少してきているので、細菌に冒されやすくなっているというような話をしていた矢先のことだ。

 S駅で待ち合わせてO病院へ向かう。途中T駅で乗り換え。乗り換えの通路に出たとたん、順さんはよろよろとそこにしゃがみ込んでしまった。一刻も早く病院へ行こうと、乗り換えの時間を気にしていた私の注意散漫が原因だ。トイレに行きたいというので、しゃがませておいて、トイレの場所を探して帰ってきてみると、人だかりというわけではないが、何人かが取り巻いていて、一旦行きすぎてから戻ってきて大丈夫ですかと声をかける人、足を延ばす方がよいとアドバイスをしてくれる人などがいた。トイレは緊急性は無いというので、しばらくそこで休んでもらう。順さんによれば、目の前の景色がぼやけてきてふらふらになったという。遠くの文字が読めることなどを確認して、立ち上がってもらった。電車の再度乗り、病院のあるO駅に着いたのは11時10分くらい。タクシーでO病院へ。

 外科受付を済ませて・・・と思っていると、A医師に普段から付き添っている看護婦が出てきて、別室ですぐさま点滴を開始した。その部屋は受付の裏に当たっていて、「本川さん来た?」などという会話が聞こえてくる。ようやく、少しずつではあるが、ことの重大さが感じられるようになった来た。看護婦さんなども、顔の感じが違う。血液の検査をしたのが11時45分頃。40分くらい経過しただろうか、先の看護婦さんがやってきて、白血球数を知らせてきた。その数500。先に書いた白血球数のところを読み返していただければ分かるように、2500以下では抗ガン剤の投与は禁止されている。だいたい平均5〜6000あるそれが、500しか無い!看護婦に3日程度の入院が必要と言われる。

 そうこうしているうちに、A医師がやってきた。「今日来てくれてよかったよ。500しか白血球ないよ。今日来なかったら死んでいるよ。」といって、白血球が普段してくれている役割を説明して、抗ガン剤の時それが低下するから注意が必要な説明を、普段よりかみ砕いて丁寧にしてくれた。そして「今日は返せない。5〜6日入院だ。」って言われてしまった。冗談で、「ホームページに書くなよ!」なんて言われたが。その態度はどこか真剣だった。今度も個室だったが、前のように風呂トイレ付きではない。その他の調度品類はほぼ同じ。ただトイレは自室にあった方が便利。まぁ前の差額ベット代の半分なのだから仕方がない。

 それから私は家までとんぼ返りをして、再びいろいろ揃えて病院へ戻ってきた。かなり注意深く品物を揃えたつもりだったが、ホルモン剤を持ってくるのを忘れた。病院へ戻ると、直ぐに夕食になったが、順さんは殆ど食べられなかった。その後A医師が来て、食事の量を聞いて、ダメだったということもあって、どうやら点滴の処方が代わった。高熱だと言うこともある。それからA医師に私が泊まる許可をもらった。今夜はこの高熱では少し心配だから。病院の方では、どうも解熱剤を使って下げるという方針はこの時点ではないように感じられた。今夜は病院の方も要注意ということで、A医師の指示で、1時間毎に血圧を測ることになっているという。まぁ1時間毎に看護婦が回ってくるのだから、それはそれで心強いものがある。夜になってから、更に体温は上がり10時過ぎには殆ど40度迄あがった。家から持ってきた体温計が大活躍だ。22時20分にはとうとう順さんは、股と両脇の3ヶ所にもアイスノンのような冷材を入れることになった。

 高熱であるにも関わらず、順さんの頭はけっこうシャープだ。20時45分、とうとう座薬の出番となった。この時も、少し前にトイレに行き、そろそろ座薬かもしれないと肛門をきちんときれいにしてきたと言うし、座薬が何分くらいで溶解するか、つまりどのくらい経ったらトイレに行けるかもちゃんと看護婦に聞いている。看護婦は座薬を入れるのは「先生の指示」と言っていたが、これは当直位置によるものなのか、あまりにもの高温なので看護婦がA医師に電話したものなのか、あるいは医師の方から電話で指示してきたのか分からない。一番最後の想像が当たっているように私は思った。(どうもその後の話でA医師の指示だったようだ。)